「なんだか、あの木、さわさわしてるね」
山からの帰り道、葉が風に揺れる音がしてきました。昔、道端のぺんぺん草で作った鈴の音にも似ています。
耳をすますと、「さわさわ」は、特定の場所から聞こえて来るのです。辺りを見回すと、不思議なことに、並木道の中で一本の木だけが、葉を揺らしていました。まるで、渋谷駅ハチ公前の人混みの中で、
「ここだよー!」
と、言いながら手を振っている人みたいです。
「さわさわの木」の足下まで近づいて、葉っぱを一枚もらいました。
葉の形が変わっています。タテの長さより、ヨコの幅の方が広い、おすもうさんのようなあんこ型。葉の付け根の茎(葉柄)がやけに長く、茎を持って葉を振るとヤジロベエのように、ゆらゆら揺れました。