はじめに 発掘記録 文化と自然1 文化と自然2 文化と自然3 文化と自然4 風土博物館
■文化と自然1

001.鵺ぬえの声を聞く
002.象のいた村
003.赤米の栽培
004.明礬の稼ぎ
005.ヒデのあかり
006.消えた浅間大明神
007.馬鈴薯の栽培
008.熊野神社の大杉
009.硫黄の採掘
010.黒色磨研の注口土器
011.大笹関所
012.三原出土の経筒
013.シナ科のサユミ
014.高原の“舞姫”
015.石戈の発見
016.嬬恋駅周辺のにぎわい
017.鹿のいる風景
018.郷土料理“クロコ”
019「大笹の湯」引湯跡
020.天狗の麦飯
021.鎌原の郷倉ごうぐら
022.炭を焼く
023.山の呼び名
024.今井の宝篋印塔
025.門貝の熊野神社
026.袋倉の廻国供養碑
027.浅間嶽下奇談

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014.高原の“舞姫”

 群馬県は隣接する長野県に次ぐチョウの宝庫で、日本で確認されている225種のうち、135種が生息しているという。嬬恋村にはそのうち120種ほどが生息していると推定されている。(『嬬恋村誌』)

 このうち、高山帯だけに生息するチョウを「高山チョウ」と呼び、日本には14種が知られている。群馬県に生息している高山チョウは、ミヤマシロチョウ、ミヤマモンキチョウ、ベニヒカゲの3種であるが、鹿沢高原の湯ノ丸山とその周辺には、その3種が生息しており、昭和52年に群馬県の天然記念物に指定されている。

 田代の文化財調査委員戸部勝さんの長年にわたる観察と研究によると、ミヤマシロチョウは、本州の中部の山岳地帯に生息するチョウで、羽の地色が白く、その付け根の一部に燈色のところがある。普通は7月上旬から現れ、7月の下旬に最盛期となる。明るい低木の上をゆるやかに飛び交い“純白の天女の舞い”を想わせるという。

 ミヤマモンキチョウも、ミヤマシロチョウと同じく中部山岳地帯に生息するチョウで、オスの羽の地色は黄色で、メスは表は白く裏は薄黄色である。共にその羽の縁の赤桃色が美しい。7月の中・下旬に最も多く発生し、クロマメノキなどの上を素早く飛ぶ姿が印象的という。

 ベニヒカゲは、白山(福井県)以北の高山帯に生息し、オスの羽の地色は黒くメスは焦茶色である。羽の縁は榿色で、眼の様な紋があり、特にメスにはその中央に白点がある。その発生は、8月初旬に始まり最盛期は下旬となり9月下旬まで続き、明るい草地の上を低くゆるやかに飛び交うという。

 湯ノ丸山を中心とした嬬恋西部の高原にあでやかに舞う高山チョウ。人間の歴史を遙かに越した氷河時代から、様々の環境の変化に順応しながら、その小さな命を今日に引き継いでいる。