はじめに 小論集 文化と自然1 文化と自然2 文化と自然3 文化と自然4 風土博物館
■文化と自然1

001.鵺ぬえの声を聞
002.象のいた村
003.赤米の栽培
004.明礬の稼ぎ
005.ヒデのあかり
006.消えた浅間大明神
007.馬鈴薯の栽培
008.熊野神社の大杉
009.硫黄の採掘
010.黒色磨研の注口土器
011.大笹関所
012.三原出土の経筒
013.シナ科のサユミ
014.高原の“舞姫”
015.石戈の発見
016.嬬恋駅周辺のにぎわい
017.鹿のいる風景
018.郷土料理“クロコ”
019「大笹の湯」引湯跡
020.天狗の麦飯
021.鎌原の郷倉ごうぐら
022.炭を焼く
023.山の呼び名
024.今井の宝篋印塔
025.門貝の熊野神社
026.袋倉の廻国供養碑
027.浅間嶽下奇談

■サイトマップ
■リンク
■トップページへ戻る

シリーズ嬬恋村の文化と自然1

平成10年5月11日 『上毛新聞』「三山春秋」より

 どんな所でも住んでみなければ、その土地の良さは分からないという。ならばと、嬬恋郷土資料館長の松島栄治さんは、4年前に、浅間出麓に家を達てた。週の前半を前橋市、後半を嬬恋で生活する日々を送る。

「若葉、青葉のころとも、なれば、ウグイス、カッコウ、ツツドリ、ホトトギスなどが鳴き競い、シジュウカラ、コゲラ、カケスなどが忙しく飛び交う。まさに浅間高原は野鳥の宝庫なのである」

 《シリーズ嬬恋村の自然と文化》と題して、村の広報紙に執筆連載を開始したのは、山麓で寝起きをするようになつて2年後の96年6月号から。その第1回では、鵺の異名で古典にもしばしば登場するトラツグミなど鳥の話が、新鮮な驚きとともに記された。

 2回目以降も考古学研究者らしく、村内に埋もれた歴史や文化、自然の生態を掘り起こし、エッセー風に分かりやすく解説している。止血剤や染色などの薬品に用いられる明礬の一大産地であったことや、全国に先駆けて馬鈴薯の栽培を開始したことなど、江戸時代の意外な事実を紹介。

 中でも興昧深いのが”幻の織物”の話。木綿が普及していなかったころ、村ではシナの木の皮からとった繊維で糸を紡ぎ、布を織ったり編み物をしていた。いまも名残の木が資料館近くにあり、復活させて村の特産品にしようという試みが、松島館長を中心に盛り上がる。

 15日発行の5月号で連載も24回目。「郷土の再発見に役立つ」と好評で「4、50回になったら本に」といった声も出始めた。800字足らずの小さなコラムが、浅間山麓の文化発信に大きく貢献している