はじめに 小論集 文化と自然1 文化と自然2 文化と自然3 文化と自然4 風土博物館
■風土博物館

1.序文
2.嬬恋村風土博物館の提案
3.嬬恋村整備構想

4.鎌原地区整備構想
  4-4.埋没村落整備構想
     @鎌原観音堂石段
     A延命寺跡
     B十日ノ窪民家跡
  4-5環境整備構想
     @全体計画
     A街並
     B延命寺跡周辺
     C資料館周辺

5.推進計画
6.調査計画

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■リンク
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@鎌原観音堂石段

 鎌原観音堂は、鎌原の集落の中で最も観光客の集まる場所であり、かつ地域住民の信仰も篤いお堂である。しかし・境内は・土産物店・四阿・トイレ等がやや乱雑に配置されており・観音堂境内の景観としてふさわしいとはいえない。
 整備対象の中心となっている石段は、現在も埋没をまぬがれた上部15段が使用されており、埋没した石段の状況は、橋を架け地面を掘り下げて、数段が見学できるようになっている。
 本構想では、観音堂境内に地下空間を設置し、石段だけでなく、当時の地表も露出させ、天明3年当時の視界を体験させる。また地下空間内部では、天明3年浅間山の噴火に関する展示を充実させ、土層断面のはぎ取り展示なども行う。
 上部は、木工地盤とし、現在の観音堂への通路部分の景観を損なわないよう周囲と一連の地盤となる構造とする。

・内部空間として、観音堂・石段・当時の地表が一望できる「埋没以前の視界」を確保する。
・内部では、天明3年に鎌原村を埋没させた押出しとされる現象などの展示を充実させる。
・土留め壁面は、展示に活用するほか、土層断面のはぎ取り等を用いた修景を行う。
・上部は、周囲と一連の地盤となる構造とする。
・土留め工法は、極力遺構に影響しないものを選定する。


鎌原観音堂整備方針図(省略)

内部(地下施設):観音堂の埋没石段や当初の地表など、天明3年以前の景観を露出する。また、噴火当時の状況をつたえる展示や地層断面のはぎ取り等、展示空間として利用する。

上部(人工地盤):現在の景観を損なわないよう、植栽などを施し、周囲と一体化させる。

A延命寺跡(B)
 延命寺跡は、鎌原地区が見渡せる高台に位置し、周囲を畑や雑木林に囲まれており、第6次にわたる発掘調査によって本堂・庫裏・納屋等が確認されている。
 遺構は現地表面より約6.5m下の天明3年当時の地表面に、その存在が確認されており、観音堂境内には、天明3年の浅間山の噴火の際に流失し、明治43年吾妻川の河原より発見された門石が残存している。また、その門石の欠損した一部分が鎌原地区の路傍に道標として転用されている。
 延命寺までの導入路は、資料館付近から、畦道に近い遊歩道を下って来る道と、街道(村道)から民家の間を抜けて、短冊状の地割の間を抜けてくる路の2つがある。どちらの道も本格的な整備がされておらず、延命寺跡へのアクセスを整備する必要がある。
 参道として利用されていたと考えられる道は、街道側からの道であり、地割を認識することもできるので延命寺跡への参道(遊歩道)として歩道整備すべきであろう。
 延命寺跡の整備の目的は、延命寺(本堂・庫裏・納屋)の埋没状況を明らかにすることと、出土した遺物による災害当時の状況の展示である。施設は、周辺環境を考慮し、当時の延命寺の規模(特に高さ)を越えないような施設にすべきである。

・この施設では、延命寺(本堂・庫裏・納屋)の埋没状況を明らかにすることと、出土した資料の展示による災害当時の状況をわかるようにすることが目的である。
 また、十日ノ窪と同様に計画的な発掘調査を行う。

・上記与条件から、資料館機能と覆い屋架設が必要である。
 この位置は、鎌原集落全体でも景観上の要点であるので、当時の延命寺を上回る規模の建築や、近代的な構造物は避けるべきと思われる。
 従って、全体的に覆い屋を架設し、逐次、発掘調査・保存処理・資料館活動が行えるような地下構造物とする。


B十日ノ窪民家跡
 十日ノ窪の埋没民家跡は、昭和54年及び56年に発掘調査され、少なくとも3棟の家屋があったことが明らかとなっているが、まだ全域の発掘調査は終わっておらず、家屋全体が発掘されたのは、発見された3棟のうち中央の1棟のみである。現在までに発掘調査の行われた埋没民家からは多数の建材や生活用品が出土している。十日ノ窪は、未発掘地域も多いので、体験発掘の場とする。
 また、十日ノ窪民家跡の導入口としては、道路を隔てた観音堂境内からの動線が考えられる。これらを結ぶ歩道が必要であろう。
 十日ノ窪はまだ全域が発掘されていないこともあり、まず体験発掘のための設備が必要とされる。
 埋没民家の遺構面が現地盤面より2〜6mであり、体験発掘と同地点での埋没民家復元展示は不可能であるので、段階的に体験発掘と民家復元展示を行う。体験発掘は、危険防止のために土留めして掘り下げ、遺構の保護及び発掘の利便性を考慮して、発掘現場全域を仮設の覆屋で屋根を架け、全天候で発掘可能な施設とする。体験発掘及び調査終了後、遺構上に遺構保護盛土を施したうえ埋め戻し、周辺の地盤面と同じ高さで、遺構の直上地点に発掘調査を基に民家の復元展示を行う。その際発掘された民具や生活用品などの展示を行い、当時の生活状況の再現を試みる。


十日ノ窪民家跡体験発掘及び遺構復元展示
・遺構包含層より、1.5m程度上面まで土留め・掘り下げを行い、仮設覆屋を架設する。一地点の体験発掘及び調査終了後、遺構保護の盛土を施し次の発掘地点に移る。

・発掘調査終了後、仮設覆屋を撤去し、遺構保護盛土を施し、現況地盤まで埋め戻す。遺構直上の地点に埋没民家の復元展示を行う。